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バルトロ氷河紀行 カラコルム 川村時郎・記 世界第2の高峰“K2”の姿を見たく、昨年9月にバルトロ氷河のトレッキングに行って来ました。 K2(8,611m)は、世界の屋根と言われるヒマラヤ、カラコルムとヒンドゥクシ各山脈の内、カラコルム山系の中に聳えています。カラコルムは、パキスタンとインドおよび中国と国境を成していますが、この旅はパキスタンからバルトロ氷河に入ったものです。 パキスタンについて少々記します。パキスタンは回教国です。これまで回教国としてはインドネシア・マレーシアなどに行ったことがありますが、それらの国に較べるとパキスタンは戒律が少し厳しいようです。酒類を飲むことは厳禁されていてホテルなどでは一切提供されません。酒を殆ど飲まない私にはなんの問題もありませんでしたが、酒好きの人にはこたえたようです。しかし、パキスタンの北部になるフンザ地方にはいわゆるドブロクのような地酒があるとのことです。また、世の中には裏の世界がつきもので、回教国パキスタンもその例外ではなく、その道をたどれば酒類の入手も可能なようです。トレッキングが終わった帰りにはイスラマバードでビールを入手することができました。缶ビールでしたがその缶にはなんと“Made in Pakistan”と記されていました。この缶ビールは沢山入手できたので飲みきれずお土産に持って帰ろうと思いザックに入れて飛行場に行ったら荷物検査があり取り上げられてしまいました。国外へ持ち出すのだから問題ないはずなのに取り上げる理由はないと思いましたが、取り上げた当人があとでこっそり飲むのだろうと邪推して納得することにしました。 パキスタンの主食はジャガイモ、麦、米のようです。その米はいわゆる外米で長粒米です。しかし、戦後に輸入されて外米よりも粒の径が細く長さが際立っていて、珍しく感じさせられました。その他、山麓にはそば畑が目につきました。白花のほか紅花のものもありました。日本のように細く切って食すことはなく、麦と同様粉を練って薄く延し焼いて食べるとのことです。チャパティと呼ばれるものです。 さて、本題のバルトロ氷河に入ります。バルトロ氷河は全長60kmに及ぶ大氷河です。幅も広いところでは対岸が遙か彼方に見えます。この氷河を16日間掛けてテント生活をしながら歩きました。9月9日に標高3,000mから歩き出し10日後に標高5,200mの最終目的地K2ベースキャンプに至りました。10日を掛けて徐々に高度を上げて行きましたのでいわゆる高山病の高度障害は参加者6名全員が起こしませんでした。2004年にヒマラヤの6,600m峰に登りましたが、このときは参加者8人中、高度障害を起こして登れなかった人が2人でました。高度障害は体質が原因するものが大きく、幸い私は比較的高度には順応できる体質の様です。しかし、次回に高度障害を起こさないとは限らないそうです。高度障害を抑える薬「ダイアモックス」というものがありますが、万能ではないとのこと。 K2はバルトロ氷河のどんづまりにあるコンコルディアまで行かないとその姿を現しません。コンコルディアに到着した日は雲があり、K2を見ることができませんでしたが、翌朝から三日間は快晴となりK2を充分堪能することができました。K2はバルトロ氷河に続くゴドウィンオースティン氷河の脇にピラミッドのように屹立し、その南西には秀麗なエンジェルピークを従えて誠に美しいものでした。 K2のほかこの山域にはブロードピーク、ガッシャーブルムT峰、U峰の8,000m峰があるほかチョゴリザ(京大隊初登頂)、バルトロカンリ(東大隊初登頂)、マッシャーブルムなどの7,000m峰があり見ごたえのある場所でした。更に来る途中ではもう一つの8,000m峰ナンガパルバットも見ることができました。 日本を出発してから帰国するまで26日間の長旅でしたが、充実したトレッキングをすることができました。
海外トレッキング ベスト50コース(山と渓谷社) より ヒマラヤというと熟練した登山家の領域と思われがちですが、普通の体力があればトレッキングすることに問題はありません。長い日数を要するということで仕事を持っている人には難しいですが、時間に余裕のある人には手の届くところです。最高到達地点標高3,000m程度でアンナプルナ、ダウラギリなどの8,000m峰が手の届きそうなところに見えるコースもあります。興味をお持ちの方は是非行ってみてください。 なお、K2とはイギリスの測量隊がカラコルムNo.2という記号をつけたもので、現地名としてチョゴリという名前があります。 以上 |