投稿文22
蕎麦打ちの勧め
投稿者:塩入 明
最近蕎麦打ちをやっていると言うと興味をもたれる人が多く、王友会のホームページに書いてみたらと言うことになりましたので、話題提供のつもりで少々スペースをいただきます。 私の蕎麦打ちは教室に通ったわけではなく全くの自己流なので、技術的な解説は本やホームページにいくらでも出ていますからそれを参考にしてください。ここではそれ以外の話をしてみたいと思います。 まず何故蕎麦打ちを始めたのかというと、「美味しい蕎麦が腹いっぱい食べたい」ということです。リタイアして暇になったら、美味しい蕎麦屋めぐりをしようとガイドブックを用意して楽しみにしていたのですが、4、5軒回っているうちに、これは自分で打つしかないと悟りました。 蕎麦は、取れたて、挽きたて、打ちたて、茹でたて、が美味しいのですが、全部の条件を満足するのは、年に1回の新そばの収穫を待って製粉会社から取り寄せた場合のみです。粉屋さんはいつ新そばが出るのかなかなか公表しません。古い粉が売れなくなるからかもしれませんが、こちらも在庫を減らして待っているわけです。 まあ贅沢を言わなければ後の3条件で十分です。我々アマチュアは製粉会社から取り寄せた1kg入の袋を開けた時が挽きたてと思えばよいわけです。 そば屋さんと違うのは、打ちたてです。こればかりはそば屋では無理です。手打ち蕎麦の店でも、昼のお客に出すためには朝のうちから打っておかなければなりません。 もっと大事なことがあります。そば粉はうどん粉の数倍の値段です。私の買っているそば粉は高い部類に属しますが、1キロ1700円です。普通手打ち用のそば粉は800円から2000円、平均1300円程度です。うどんも自分で打ちますが、最も高いうどん粉でも300円足らずですから5倍近い差があります。 蕎麦というものは、30%そば粉が入っていれば(70%はうどん粉でも)「蕎麦」と称して良いことに、規格で決まっているそうです。 さて皆さんが食べている蕎麦は果たして蕎麦でしょうか、そば風味うどんかも知れませんね。 こうしてみると、自家製の手打ち蕎麦が美味しいのは当然ですね。 次は量の方です。正直な話、私が蕎麦打ちを始めたきっかけは、こっちの方なのです。日経新聞にこんな記事が載りました。 「そば1枚の量は」 という記事で 「名店の手打ちそばは量の割に値段が高い」とあって有名店のそば1枚の量と値段が出ています。 一覧表にすると 虎ノ門 巴町 砂場 120g 840円 永坂更科布屋太兵衛 200g 840円 麻布十番 並木藪蕎麦 100g 650円 浅草雷門 かんだやぶそば 130g 630円 これに対し、私の腹いっぱいの量は 約350g ですから、こういった有名店で食べると、腹が空くか、財布が空になるか、どちらかと言うことになります。 こうして美味しい蕎麦を腹いっぱい食べるには、自分で打つしかないという結論に達しました。 蕎麦というものは、これほどシンプルな食べ物はありません。なにしろ材料はそば粉と水だけです。 したがって良いそば粉を手に入れることが第一条件です。水は飲んで美味しい水なら良いと思いますが、カルキ臭かったりする場合は「アルプスの天然水」とか「支笏の秘水」のような軟水を使えばよいでしょう。 そば粉は全国各地のものを試してみましたが、今のところ長野県の八ヶ岳山麓でとれたものが一番美味しいと思っています。「高山製粉」という会社から、通販で取り寄せています。 旅行先で売っているそば粉で美味しいものに当たるのは稀です。いつか富士山麓の観光地で、水車で粉を挽き販売しているのを買ってきましたが全然だめでした。永平寺の近くで買ったという粉を頂きましたがこれは良かったです。 始めはアマチュア向けの手打ちそば用の粉を買うのが無難だと思います。 そばが美味しくても、そばつゆが美味しくなければ話になりません。 地方に行くと、せっかく美味しいそばなのにつゆがぜんぜんだめという店が時々あります。 つゆもそばと同様シンプルなもので、 醤油、みりん、(砂糖)、だし だけです。 醤油にしてもみりんにしても目いっぱい張り込んで最高級品を使います。といってもせいぜい2、3割高い程度で、しかも使用量は僅かですから、大したことではありません。 だしはかつお節から削るのが本格派かもしれませんが、面倒なので削り節を買っています。築地の魚河岸の専門店まで買いに行きます。通販でも買えますが、無愛想なプロの店で符牒を言って買うのが面白く、銀座に出かけたついでに寄って来ます。そしてたっぷり使うことです。けちけちしてはいけません。 以上をまとめると、そば粉、醤油 みりん 鰹節 など材料は最高級品を使うこと。いくら贅沢をしても、そば屋で食べるより高くつくことは絶対にありません。 安心して贅沢をして下さい。 次は道具です。 これは高級品である必要は全くありません。私は包丁以外のものは初心者用のものを未だに使っています。道具に凝る人もいますが、それは人それぞれということにして、そばの味と道具は相関がないと思っています。ただし包丁だけは別で、切れ味のよい包丁でないと十割そばの難しいものはうまく切れないようです。 機械屋である私は、そばを何とかして楽に簡単に打てないかと、パスタマシン(ローラーで伸ばしローラーカッターで切る) 麺切りカッター(25000円もした) などを買い込んでいろいろやってみましたが、結局うどんに近いものは出来ても、二八そばや十割そばは出来ないとあきらめました。やはり手で打つしかありません。 (うどん、ラーメン、パスタ など、粘りが強いものは、こういった機械を使ったほうが楽に良い物が出来ます。) さて皆さん、やってみようという気になりましたか。 同好の士が増えるのを期待しています。 |